決算書について |淡路島(南あわじ 洲本)の弁護士 あわじみらい法律会計事務所

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決算書について

決算書

はじめに

 決算書は、企業活動の実態を会計のルールに従って、会計数値として測定したものです。
 世の中ではさまざまな局面で、さまざまな人たちが、さまざまな目的で企業の情報を必要としています。
 例えば、投資者株主を含みます)は、投資すべきか否か、投資を継続すべきか否か、企業の利益配当は妥当な金額か否かなどを判断するため、企業情報を必要とします。
 金融機関は、融資を行うべきかどうか、貸付金の返済能力(回収可能性)があるかどうかを判断するため、税務当局は徴収すべき法人税額を判断するため、企業情報を必要とします。
 そのほか、取引先は、新規取引時における与信判断、売掛金の回収可能性を判断するに、企業情報を必要としますし、M&Aにおいては企業の経営状況や財務状況を把握し、M&Aを進めるか否か、適正な譲渡価格はどのくらいかなどの重要な決定を行います。
 このような中で、企業が1年間でどのくらい儲かったのか、損したのか売上は伸びているのか、停滞・減少しているのかどのような資産をどのくらい保有しているのか負債をどのくらい抱えているのかなどを把握するため、企業の決算書は参照されます。
 本コラムでは、決算書について、淡路島の弁護士兼通知税理士兼公認会計士試験合格者が解説いたします。

 

1 決算書の基礎知識

1 決算書とは

 決算書とは、各企業の事業年度ごとに経営状態や財務状況をまとめた書類の通称ですが、金融商品取引法上は財務諸表会社法上は計算書類といいます。
 決算書には、主に貸借対照表(BS,balance sheet)損益計算書(PL,profit and loss statement)キャッシュフロー計算書(CF,statement of cash flows)株主資本等変動計算書(SS,statement of shareholder’s Equity)個別注記表(notes to individual financial statement)の5つがあります。
 貸借対照表(BS)とは、ある時点(決算日)における企業の財政状態を表したもので、どのくらいの資産を保有していて、どのくらいの負債を抱えているのか、資産から負債を引いた純資産がどの程度あるのかを示しています。
 損益計算書(PL)とは、ある一定期間(1会計年度)における企業の経営成績を表したもので、1年間でどのくらい儲かったのか損したのかを示しています。
 キャッシュ・フロー計算書(C/F又はC/S)は、企業のお金の流れを示したものです。キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書だけでは把握することはできない企業のお金の流れ(*)を、営業活動投資活動財務活動の各活動ごとに示したものです。
(*):例えば、売掛金が生じたものの回収未了の状態では、損益計算書で売上が計上されていても、現預金の増加は生じておらず、貸借対照表上、売掛金が計上されている状態になります。一方で、買掛金が生じたものの支払未了の状態では、損益計算書で費用が計上されていても、現預金の減少は生じておらず、貸借対照表上、買掛金が計上されている状態になります。このように、売上を計上しても必ずしも現金が入ってくるわけではなく費用を計上しても必ずしも現金を支払うわけではないため、純粋な資金の流れを把握するためには、キャッシュ・フロー計算書が必要になります。

2 中小企業(非上場企業)の決算書 

 中小企業(非上場企業)においては、上場企業のように財政状態や経営成績を適正に表示するための財務会計に基づかず、法人税法の内容、すなわち税務会計に基づいて決算書が作成され、決算書が財務の実態を表していないことが多いです。
 例えば、回収不能な売掛金については、財務会計では、積極的に貸倒引当金を計上することが要請されますが、法人税法上は税法所定の事由(法的手続等)が生じなければ貸倒引当金を計上できません。
 また、滞留している商品や陳腐化している製品等の棚卸資産については、財務会計では、積極的に評価損を計上することが要請されますが、法人税法上はあらかじめ低価法の届出を行っていない限り、評価損を計上することはできず、実際にほとんどの中小企業(非上場企業)は、低価法の届出を行っておらず、評価損を計上していません。
 そのほか、減価償却費の取扱い(法人税法上、減価償却費の計上は強制ではなく任意)・負債性引当金の取扱い(法人税法上、負債性引当金は原則として損金算入できない)でも、財務会計と税務会計の基準の違いがあります。
 さらに、中小企業(非上場企業)では、会計監査人(監査法人又は公認会計士)の会計監査を受けておらず、監査役による監査も実質的には機能していないことが多いため、意図的な不正ではない間違いも含めて、粉飾決算になってしまっているケースも非常に多く、決算書を鵜吞みにすることはできないことが多いです。

3 貸借対照表(BS,balance sheet)
1 貸借対照表(BS,balance sheet)の仕組み

 貸借対照表(BS,balance sheet)では、左側にどのくらいの資産があるのか、右側にどのくらいの負債があるのか、どのくらいの純資産があるのかを示しています。
 純資産は、資産から負債を差し引いたもので、純資産マイナスになる状態を債務超過といいます。
 貸借対照表の着目点として、①純資産がどのくらいあるかを把握するという観点、②どのように資金を調達してきたのか、資金をどのように運用しているのかを把握するという観点があります。
 ①純資産の把握という観点について、企業価値評価手法の一つである簿価純資産法(*)は、単に貸借対照表上の純資産を企業価値とするものです。
(*)実務上の純資産法としては、簿価を時価に置き換えた上で、企業価値(純資産)を算出する方法である時価(修正)純資産法が用いられることが通常です。
 また、②資金の調達・資金の運用の把握という観点については、右側の負債・純資産資金の調達源泉を示し、左側の資産資金の運用形態を示しています。
 負債は、金融機関からの借り入れ等によって他人より調達(間接金融)した他人資本であり、純資産は、株主からの資金調達(直接金融)した自己資本です。

2 流動区分と固定区分

 資産のうち1年以内に現金化されるものは、流動資産区分され、そうでないものは、固定資産区分されます。
 また、負債のうち1年以内に支払われるものは、流動負債区分され、そうでないものは、固定負債区分されます。
 ただし、仕入から販売、回収という通常のビジネスサイクルの中にある資産・負債は、1年を超えるものでも流動資産流動負債区分されます。
 流動資産には、現預金、棚卸資産(原材料、仕掛品、商品、製品など)、受取手形、売掛金、有価証券などがあります。
 流動負債には、買掛金、未払金、未払費用、短期借入金、1年以内返済予定の長期借入金、賞与引当金などがあります。
 固定資産には、有形固定資産(建物・構築物、機械装置・運搬具、工具・器具・備品、土地など)、無形固定資産(のれん、ソフトウェアなど)、投資その他の資産(投資有価証券、長期貸付金、長期前払費用、繰延税金資産など)などがあります。
 固定負債には、長期借入金、退職給付引当金、社債、預り保証金、繰延税金負債などがあります。

3 流動資産の内容

 流動資産は、主に、当座資産(現預金・受取手形・売掛金)と棚卸資産(商品・製品・原材料・仕掛品・貯蔵品等)に分けられます(*)。
 (*)上記以外の勘定科目には、前渡金、未収入金、仮払金、前払費用などがあります。
 当座資産のうち、売掛金・支払手形については、取引先の財務状況(信用状況)によって回収することができない(債務不履行になる)可能性があります。
 これを貸倒リスク又は信用リスクといいます。
 一方で、棚卸資産については、物理的な劣化(品質低下)、経済的な品質の劣化(陳腐化)、市場の需給変化等に基づく市価の下落等により、販売することができないで在庫の廃棄せざるを得ない可能性があります。
 これを在庫リスクといいます。

4 固定資産の内容

 固定資産は、その形状などから、有形固定資産無形固定資産投資その他の資産に分けられます。
 有形固定資産は、建物や土地などの不動産、工場やオフィス等で使用する機械装置や器具備品など、長期にわたって使用する有形の資産です。
 無形固定資産は、ソフトウェア、特許権など、目に見えない無形の資産です。
 投資その他の資産は、長期投資によって生じる投資有価証券、長期貸付金、オフィスを賃借するために支払った敷金など、長期の金融資産への資金投下などです。

5 負債・純資産の内容

 負債は買受金・未払金などの日常的に発生する営業債務と、借入金、社債などの利子の支払いを伴う資金調達により発生する有利子債務、支払義務が確定していないものの、将来支払う可能性が極めて高く、その金額を高い制度で見積もることができる場合に計上される引当金に分けられます(*)。
 (*)上記のほか、販売代金を先に受け取った場合に生じる前受金などは、現金支払を予定しない特殊な債務項目です。
 純資産は、出資者である株主に帰属する株主資本、資産を時価評価した際の含み損益である評価・換算差額等、権利を行使することによって株式の交付を受けることができる権利である新株予約権に分けられます。
 このうち、株主資本は、出資者である株主の拠出額部分(払込資本)である資本金・資本剰余金、拠出額部分(払込資本)の果実である利益が企業内に留保された留保利益である利益剰余金に分けられます。

4 損益計算書(PL,profit and loss statement)
1 損益計算書(PL,profit and loss statement)の仕組み

 損益計算書(PL,profit and loss statement)は、企業の経営成績を示しており、収益から費用を差し引いて(当期)純利益を算定しています。
 損益計算書では、まず、トップラインに売上高(営業収益)が表示され、企業が商品やサービスの提供の対価として得た総額が表示されます。
 売上総利益は、売上高から商品の仕入額や製品の製造コストなどの売上原価控除した、いわゆる粗利益です。
 営業利益は、売上高総利益(いわゆる粗利益)から営業活動に必要な経費である販売費及び一般管理費控除した、本業で稼ぎだした利益です。
 経常利益は、営業利益に、営業外収益営業外費用を加減算した、正常な営業活動による利益です。
 税引前当期純利益は、税引き前当期純利益から法人税等の税金費用を控除したもので、企業の全ての収益から全ての費用を控除した純利益です。
 損益計算書では、このように段階的に利益を示すことで、企業の活動状況を理解することができるようにしています(*)。
 (*)例えば、純利益が同じ最終赤字であっても、本業自体の損益である営業利益の段階から赤字であるのか、一時的な特別損失が多額に計上され赤字に陥ったのかで、投資者・債権者の受け止め方や経営者が取るべき対策は全く異なります。

2 売上原価の内容(製造原価報告書)

 売上原価は、売上高に直接対応する原価が計上されます。
 物品販売業(卸売業・小売業)では、販売された商品の仕入原価製造業では、製品の製品原価(材料費、人件費、経費等の合計額)になります。一方で、サービス業では在庫が存在しないことがあり、売上原価が0になることがあります(例えば、弁護士業でも原則として在庫は存在しないため、売上原価は0になります。)。
 製造業の場合、損益計算書に付属して別途、製造原価の明細を明らかにする「製造原価報告書」が作成されます。

3 販売費及び管理費の内容

 販売費及び管理費は、一般に販管費と呼ばれ、営業活動のためにかかる費用のうち、売上原価以外のもの全てです。
 販管費は、主に、人件費(給与手当、賞与、退職金、法定管理費等)、販売経費(販売促進費、販売手数料、広告宣伝費、運送費、接待交際費等)、事務経費(消耗品費、通信費、水道光熱費、支払手数料等)、施設費(支払賃料、修繕費、減価償却費等)、研究開発費その他(租税公課、顧問料等)に分けられます。

4 営業外損益と特別損益の内容

 営業外収益は、受取利息受取配当金など、本業から生じた収益ではなく、余剰資金を株式や金融商品に投資した場合に生じた運用益などです。
 営業外費用は、支払利息など、事業資金の借り入れなどの財務活動の結果生じた金融費用などです。
 特別利益は、固定資産や有価証券などの資産を売却した時に生じる売却益などです。
 特別損失は、資産を売却した時に生じる売却損のほか、資産の時価が著しく下落した場合の評価損・減損損失などです。

5 キャッシュフロー計算書(CF,statement of cash flows)
1 キャッシュフロー計算書(CF,statement of cash flows)

 キャッシュフロー計算書(CF,statement of cash flows)は、企業活動に伴う収入と支出を、営業活動、投資活動、財務活動という企業の活動別に分けて表示します。
 営業活動によるキャッシュ・フローには、本業における資金収支が記載されます。
 投資活動によるキャッシュ・フローには、①設備投資や企業買収などの将来に受けた投資によるキャッシュ・フローと、②余剰資金の運用における投資とその回収によるキャッシュ・フローが記載されます。
 財務活動によるキャッシュ・フローには、企業活動の資金調達活動に関するキャッシュ・フローが記載されます。

2 事業の発展ステージとキャッシュ・フローの関係

 一般的な状況を想定した場合、➀創生期②成長期③成熟期④衰退期のキャッシュ・フローは、以下のとおりになります。
 ➀創生期では売上高が大きくないため、費用を賄うことができない一方で、設備投資等を行う必要があり、営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローのマイナスを賄うための資金を借入等で行う。
 ②成長期では、事業が軌道に乗り、増加した売上高では売上原価及び販管費などの費用を賄うことができるようになるが、さらなる事業の拡大・成長のため旺盛な投資需要があり、これを賄うための資金需要がある。
 ③成熟期では、営業活動の成長は緩やかに継続するものの、投資活動の規模は縮小し、豊富な資金を配当金の拡充や負債の圧縮に充てるという状況が想定される。
 ④衰退期では、営業活動が縮小し、設備等の縮小も進められ、債務の圧縮や株主への利益還元がさらに進められるという状況が想定される。

創生期 成長期 成熟期 衰退期
営業活動によるCF
投資活動によるCF
財務活動によるCF
3 フリー・キャッシュ・フロー(FCF)

 フリー・キャッシュ・フロー(FCF)とは、本業で稼ぎだした営業キャッシュ・フローから事業維持のために必要な設備投資等の支出を差し引いたキャッシュ・フローをいいます。 フリー・キャッシュ・フロー(FCF)は、本業で稼いだお金のうち、企業が自由に使用することができる部分を算出したものです。
 フリー・キャッシュ・フロー(FCF)は、リターンを期待する株主に対する配当の原資、事業規模の拡大・新規事業のための新規投資資金、財務体質の改善のための借入金の圧縮のための資金、リスク体制を高めるための手元資金の充実化のための資金などに使用されます。
 また、M&A等で行われる企業価値算定でもっともよく用いられるDCF法においては、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)を用います。

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