交通事故でご家族がドクターヘリやドクターカーにより搬送されると、「これほど大きな事故なのに、保険会社からは通常の事故と同じように扱われている」「本人は意識がなく入院していて、何を準備すればよいのか分からない」と感じる方が少なくありません。重症事故では、事故直後の救急現場や搬送先での記録が、後になって事故の状態を説明する大切な手がかりになることがあります。
この記事では、ドクターヘリ・ドクターカーで搬送された重症交通事故について、搬送記録・救急活動記録・初期診療記録などをどのように確保し、重症度・事故との因果関係・後遺障害・損害額・保険会社対応の整理にどうつなげるかを、被害者ご本人とご家族に向けて解説します。徳島県・淡路島周辺で交通事故に遭われた方が、次に何を確認すればよいかを把握できることを目指しています。
なお、結論は事故態様や診療内容などの個別事情により異なります。一般的な考え方を整理するものであり、具体的な見通しは資料を確認したうえで判断する必要があります。
ご家族が重症で入院中の場合、まず何を集めればよいかを整理するだけでも、その後の対応が進めやすくなります。資料の確認により、保険会社とのやり取りや後遺障害申請前の準備の方針を検討できます。
Contents
まず押さえたい結論|搬送された事実だけでなく、初期記録の中身が重要です
はじめに、重症交通事故で誤解されやすい点と要点を整理します。
- ドクターヘリ・ドクターカーで搬送された事実は、事故の重症度を示す事情の一つになり得ます。ただし、搬送されたという事実だけで、過失割合・後遺障害等級・慰謝料額・逸失利益などが決まるわけではありません。
- 賠償や後遺障害認定の場面で意味を持ちやすいのは、搬送時の状態、救急隊・医師の所見、初診時の診療録、画像検査、手術記録、入院経過、後遺症状を一貫した流れとして整理できているかです。
- 事故直後から症状があったことを記録で説明できると、後に「事故との因果関係が不明」と指摘された場合の検討材料になることがあります。
- 示談前、後遺障害申請前、保険会社から治療費の打ち切りを示唆された段階では、早めに資料を確認しておくことが有用です。
「ヘリ搬送だから必ず高額賠償になる」「ドクターカーが出動したから必ず後遺障害が認定される」というものではありません。最終的には、診断名、画像所見、神経学的所見、治療経過、後遺症状、事故態様、就労・介護の状況などを総合して判断されます。
ドクターヘリ・ドクターカーとは
ドクターヘリ・ドクターカーは、医師や看護師が現場や搬送途上で早期に医療を開始するための仕組みです。一般の方が直接要請する制度ではなく、消防機関・救急隊・医療機関などの判断と連携によって出動します。
ドクターヘリとドクターカーの違い
大まかには次のように整理できます。いずれも、医師らが早い段階で傷病者に接触し、治療を始めながら適切な医療機関へ搬送することに意義があります。
| 項目 | ドクターヘリ | ドクターカー |
|---|---|---|
| 移動手段 | ヘリコプター | 自動車 |
| 主な意義 | 遠距離・離島・山間部などへ短時間で医師が到達 | 地上で救急車と合流し早期に医療介入 |
| 想定される場面 | 広域からの重症例の搬送など | 市街地・近距離での早期治療開始など |
| 共通点 | 医師・看護師による現場又は搬送途上での早期医療介入 | |
運用の詳細や対象は地域・運営主体により異なります。具体的な体制は、後述のとおり公式情報での確認が必要です。
徳島県・淡路島周辺で確認したい救急医療体制
淡路島から徳島方面にかけての地域では、関西広域連合が主体となった広域的なドクターヘリの体制が整えられています。関西広域連合の説明によると、府県域にとらわれない柔軟な運航体制や、要請が重複した場合に複数機が補い合う相互応援体制が構築され、おおむね30分以内に救急医療を提供できる体制を目指しているとされています。徳島県では、県立中央病院を拠点とするドクターヘリが運用されています。
淡路島(南あわじ市・洲本市・淡路市)、鳴門市、徳島市などの地域性を踏まえると、事故の発生場所や搬送経路によって、関与する消防本部・搬送先・運用主体が異なることがあります。どの機関が関わったかは、記録を確認するうえで出発点になります。
運航状況は公開日時点で公式情報を確認してください
ドクターヘリの運航状況は、委託先や人員体制などの事情により変わることがあります。実際に、徳島県のドクターヘリは時期によって運航体制が変動した経緯があります。本記事の内容と現在の運航状況が一致しているとは限りませんので、最新の状況は徳島県・関西広域連合などの公式情報でご確認ください。なお、損害賠償の検討において重要なのは、運航の有無そのものよりも、実際に作成された搬送記録や診療記録の内容です。
搬送記録が交通事故の損害賠償で重要になる理由
救急現場や搬送途上、搬送先で作成される記録には、事故直後の客観的な情報が含まれることがあります。これらは、後から再現することが難しい情報です。
事故直後の重症度を説明する資料になります
救急活動記録や初期診療記録には、事故直後の意識状態、呼吸・循環・血圧・酸素飽和度などのバイタル、疼痛・麻痺・しびれ・出血・開放創・骨折の疑い、頭部外傷・意識障害・けいれん・記憶障害、頸髄・脊髄損傷を疑う所見、高エネルギー外傷や多発外傷の可能性、搬送先選定の理由、現場での医療処置などが記載されることがあります。これらは、受傷直後の状態がどの程度であったかを説明する手がかりになります。
事故と症状の因果関係を説明する手がかりになります
保険会社とのやり取りでは、後になって「その症状は事故とは関係がないのではないか」「もともとの病気によるものではないか」と指摘されることがあります。事故直後から症状があったことが記録で確認できると、こうした指摘に対する検討材料になり得ます。もっとも、因果関係の最終的な判断は、医学的所見や治療経過などを総合して行われるため、記録があれば必ず認められるというものではありません。
後遺障害申請で初期症状の一貫性が問題になることがあります
後遺障害の認定では、後遺障害診断書だけでなく、事故直後からの記録が確認されることがあります。頭部外傷や高次脳機能障害、脊髄損傷、骨折後の可動域制限、神経症状などでは、受傷直後から症状固定時までの所見が一貫しているかが検討されやすい分野です。搬送記録・初期診療記録・画像所見・神経学的所見・治療経過・症状固定時の状態をつなげて整理しておくことが、申請の準備として意味を持つことがあります。等級そのものは、医師の診断、画像、検査、症状の一貫性、認定実務などにより判断されるため、ここで等級を断定することはできません。
家族が早めに確認したい資料一覧
重症事故では、確保すべき資料が多岐にわたります。すべてを一度にそろえる必要はありませんが、どこに何を請求・確認するかを早めに把握しておくと、後の対応が進めやすくなります。時間の経過により入手が難しくなる資料もあります。
| 資料 | 主に確認できること | 請求・確認先(一般的な例) |
|---|---|---|
| 交通事故証明書 | 事故の発生日時・場所・当事者など事故の事実 | 自動車安全運転センター(警察への届出が前提) |
| 実況見分調書・物件事故報告書など | 事故態様・現場状況(過失割合の検討に関わる) | 捜査機関(刑事記録の取扱いは手続による) |
| 救急活動記録 | 救急隊が把握した受傷直後の状態・処置 | 所管の消防本部など(取扱いは機関による) |
| ドクターヘリ・ドクターカーの診療記録 | 現場・搬送途上での医師の所見・処置 | 運用する医療機関など |
| 初診時診療録・救急外来記録 | 受傷直後の診断名・主訴・所見 | 搬送先の医療機関 |
| 入院診療録・看護記録 | 入院中の経過・症状の推移 | 入院先の医療機関 |
| 手術記録・麻酔記録 | 手術の内容・時期 | 手術を受けた医療機関 |
| 画像検査・画像CD・読影レポート | 骨折・出血・損傷などの画像所見 | 検査を受けた医療機関 |
| 血液検査・神経学的検査・リハビリ記録 | 全身状態・神経症状・回復経過 | 検査・リハビリを行った医療機関 |
| 診断書・診療報酬明細書 | 傷病名・治療内容・治療経過 | 治療を受けた医療機関 |
| 後遺障害診断書 | 症状固定時の後遺症状(申請の中心資料) | 主治医(症状固定後) |
| 休業損害証明書・収入資料 | 事故前後の収入・休業の状況 | 勤務先・税務署・市区町村など |
| 介護記録・日常生活状況の記録 | 介護の必要性・生活への影響 | 家族による記録など |
| ドライブレコーダー・現場写真・車両損傷写真 | 事故態様・衝撃の程度 | 本人・家族・関係者の保管分 |
診療記録の開示は、原則として患者ご本人が求めるものとされています。ご本人以外が開示を求められる場合についても一定の整理がありますが、医療機関ごとに手続・必要書類・費用・期間が定められており、取扱いは医療機関によって異なります。請求先や方法は各医療機関にご確認ください。ご本人が判断できない状態のときに、ご家族がどのように対応できるかは、後述のとおり個別の検討が必要です。
初期診療記録で確認したい立証ポイント
初期の診療記録では、受傷直後の診断名、主訴、意識レベル、神経学的所見、画像所見、手術の有無、入院期間、集中治療室(ICU)管理の有無、リハビリ開始時期、合併症、医師の説明内容、症状の一貫性、事故前の既往症との関係、症状固定時期の見通しなどが手がかりになります。症状ごとに着目点が異なります。
意識障害・頭部外傷がある場合
受傷直後の意識状態の記録、頭部画像の所見、けいれんや記憶障害の有無などが手がかりになります。高次脳機能障害が問題になる場合は、受傷直後から症状固定までの経過と、家族から見た生活上の変化の記録が確認されることがあります。医学的な評価は医師が行うものであり、記事内で診断を断定することはできません。
脊髄損傷・麻痺・しびれがある場合
受傷直後の麻痺やしびれの範囲、神経学的所見、画像所見などが手がかりになります。症状の範囲や程度が初期から記録されているかが、後の評価で問題になることがあります。
骨折・多発外傷・手術がある場合
骨折部位、手術の内容と時期、可動域や変形の有無、リハビリの経過などが関わります。複数の部位を受傷している場合は、それぞれの経過を整理しておくことが有用です。
事故前の既往症を指摘された場合
保険会社から、事故前の病気やけがを理由に因果関係を争われることがあります。この場合、事故前の状態と事故後の状態の違いを、診療記録などで説明できるかが検討材料になります。結論は資料の内容により変わるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
重症事故で問題になりやすい損害項目
重症事故では、検討すべき損害項目が多くなります。代表的なものとして、治療費、入院雑費、付添看護費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益、将来介護費、住宅改造費、車両改造費、装具費、将来治療費などがあります。死亡事故の場合には、死亡慰謝料、死亡逸失利益、葬儀費用などが問題となります。
どの項目が認められるか、また金額や算定の方法は、傷病の内容・後遺症状・収入・介護の状況などの個別事情により異なります。具体的な金額や算定基準は、資料を確認したうえで個別に検討する必要があります。自賠責保険・任意保険・裁判実務で参照される考え方には違いがあるため、提示された金額をそのまま受け入れる前に、損害項目に漏れがないかを確認することが有用です。
保険会社とのやり取りで注意したい場面
次のような場面では、対応の前に資料や見通しを確認しておくことが役立ちます。
治療費の打ち切りを示唆された場合
治療費の対応が打ち切られると示唆されても、治療の必要性は医学的な観点から判断されるべきものです。主治医の判断や診療記録の内容により見通しは変わります。打ち切りの示唆があった段階で、現在の症状と治療の必要性を整理しておくことが考えられます。
後遺障害申請を任せてよいか迷う場合
後遺障害の申請には、保険会社に手続を任せる方法と、被害者の側から資料を準備して請求する方法があります。どちらが適しているかは事案により異なります。いずれの場合も、後遺障害診断書だけでなく、事故直後からの記録や画像などがそろっているかを確認しておくことが、申請前の準備として意味を持つことがあります。
示談案が届いた場合
示談に応じると、原則としてその内容で解決が確定し、後から覆すことは容易ではありません。示談案が届いたら、署名・押印の前に、損害項目に漏れがないか、後遺症状の評価が反映されているかなどを確認することをおすすめします。重症なのに物損や軽症事故のように扱われていると感じる場合や、過失割合を争われている場合も、内容を確認したうえで判断する必要があります。
ドクターヘリ・ドクターカー搬送後にご家族ができること
ご本人が重症で動けないとき、ご家族の初期対応が後の手続を支えます。次の順序で確認すると整理しやすくなります。
- 警察:人身事故としての届出状況を確認する。交通事故証明書の取得につながります。
- 病院:搬送先の病院名、搬送経路、初診日、主治医、診療科を整理する。複数の病院を経由している場合は、それぞれを把握しておく。
- 記録・書類:診断書、領収書、診療報酬明細書、保険会社から届いた書類を保管する。日々の症状、介護状況、通院状況、主治医の説明をメモに残す。
- 勤務先:事故前後の収入が分かる資料(休業損害証明書・源泉徴収票など)を確認する。
- 弁護士相談:資料が多く何から手を付けるか分からない場合や、本人が判断できない状態の場合は、代理権・親族による開示請求・成年後見などの必要性も含めて相談する。
本人が判断できない状態のときに、ご家族がどこまで対応できるかは、状況により異なります。診療記録の開示や各種手続をご家族が進められるかどうかは、個別の事情に応じて検討する必要があります。
「何から集めればよいか分からない」「保険会社から連絡が来たが、どう答えてよいか迷う」という段階でも、資料を確認することで、ご家族が次に取るべき対応を整理できます。
弁護士に相談するタイミング
次のような場合は、早めに相談を検討する場面といえます。ドクターヘリ・ドクターカーで搬送された、集中治療室(ICU)入院・手術・多発外傷・意識障害・脊髄損傷・頭部外傷がある、治療費の打ち切りを言われた、後遺障害申請の前である、症状固定を言われた、示談案が届いた、ご家族が保険会社対応を続けていて負担が大きい、資料が多く何を集めればよいか分からない、といった場面です。
弁護士への相談は、結果を保証するものではありません。相談により期待できるのは、必要な資料を整理できること、後遺障害申請前に不足している資料を確認できること、保険会社対応の方針を検討できること、示談前に損害項目の漏れを確認できること、ご家族が行うべき対応を整理できることなどです。見通しは資料の内容や個別事情により変わります。
よくある質問
ドクターヘリで搬送されれば、後遺障害は必ず認定されますか。
そうとは限りません。搬送の事実は重症度を示す事情になり得ますが、後遺障害の認定は、医師の診断、画像、検査、症状の一貫性、認定実務などを総合して判断されます。個別事情により結論は異なります。
搬送記録や救急活動記録は、どこに請求すればよいですか。
記録の種類により請求先が異なります。診療記録は搬送先などの医療機関、救急活動記録は所管の消防本部などが一般的な例です。手続・必要書類・費用は機関ごとに定められており、取扱いは機関によって異なりますので、各窓口にご確認ください。
家族であれば、入院中の本人のカルテを自由に開示してもらえますか。
診療記録の開示は原則として患者ご本人が求めるものとされています。ご本人以外が求められる場合についても一定の整理がありますが、本人の判断能力の状況や代理権の有無などにより取扱いが異なり、医療機関ごとに手続が定められています。ご家族が開示を求められるかは個別に確認する必要があります。
保険会社から治療費を打ち切ると言われました。応じるしかないのでしょうか。
治療の必要性は医学的な観点から判断されるべきものです。主治医の判断や診療記録の内容により見通しは変わります。打ち切りを示唆された段階で、現在の症状と治療の必要性を整理しておくことが考えられます。
事故前の持病を理由に、因果関係を争われています。
事故前の状態と事故後の状態の違いを、診療記録などで説明できるかが検討材料になります。結論は資料の内容により変わるため、資料を確認したうえで判断する必要があります。
請求には期限があると聞きました。いつまでに動けばよいですか。
自賠責保険の請求や損害賠償請求には期限(時効)があり、起算点は傷害・後遺障害・死亡などの区分によって異なります。期限を過ぎると請求が難しくなることがあります。具体的な期限・起算点・更新の取扱いは、国土交通省の案内などで確認し、早めに準備することをおすすめします。
示談案が届きました。すぐに署名してよいですか。
示談に応じると、原則としてその内容で確定し、後から覆すことは容易ではありません。署名・押印の前に、損害項目の漏れや後遺症状の評価が反映されているかを確認することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、賠償額は必ず増えますか。
必ず増えるというものではありません。資料の確認により、損害項目の漏れや後遺障害申請前の不足資料を整理できる場合がありますが、結果は事案ごとに異なります。
まとめ
- ドクターヘリ・ドクターカーで搬送された事実は重症度を示す事情になり得るが、それだけで賠償額や後遺障害等級が決まるわけではない。
- 重要なのは、搬送時の状態・救急隊や医師の所見・初診時の記録・画像・手術記録・入院経過・後遺症状を一貫した流れとして整理すること。
- 記録の種類により請求先が異なり、時間の経過で入手が難しくなるものもあるため、早めに把握しておく。
- ご家族は、警察・病院・記録や書類・勤務先・弁護士相談の順に確認すると整理しやすい。本人が判断できない場合の対応は個別の検討が必要。
- 示談前・後遺障害申請前・保険会社への回答前には、損害項目や不足資料を確認することをおすすめします。個別事情により結論は異なります。
重症交通事故では、確認すべき資料や手続が多くなります。資料を確認することで、後遺障害申請前の準備や保険会社対応の方針、示談前の損害項目の確認を進めやすくなります。
監修者
【要確認:公式サイトの表示に基づき、弁護士名・所属弁護士会・資格・取扱分野を記載してください】
弁護士法人ひょうご あわじみらい法律会計事務所(兵庫県南あわじ市)。交通事故案件にも対応しています。
参考資料(公的機関・公式情報)

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