写真撮影に関する法的論点について
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写真撮影に関する法的論点
はじめに
本コラムでは、写真撮影に関する法的論点について、淡路島の弁護士が解説いたします。
1 写真撮影と肖像権
1 相続財産の全部又は一部を処分すること
写真撮影において、無関係の人が写り込んでしまうことがありますが、こうした写真を撮影することや使用することに法的な問題は生じ得るのでしょうか。
いわゆる肖像権(=人の有するみだりに自己の容ぼう等を撮影されない法律上保護されるべき人格的利益のこと)との関係では、以下のような議論があります。
2 街並み等で無関係の人が写り込んでしまったとき
街並み等で無関係の人が写り込んでしまったとしても、写っている人物がだれか特定できない場合、一部だけが写り込んでいる場合、遠くてはっきりわからない場合などには、肖像権の侵害が問題となることは考えにくいです。
また、観光地や公園、イベント会場等の多くの人が集まる場所で、撮影されることが予想される状況で写り込んだ場合も、法的には撮影された側も撮影されることを容認していると考えられます。
したがって、肖像権の侵害が問題となることはほとんどないと考えられます。
ただし、海水浴場での水着姿の撮影等は問題が生じるおそれがあります。
3 自宅の中等の私的領域を撮影すること
自宅の中等の私的領域を撮影することは、通常、予測されず、また、容認しないと考えられるため、肖像権の侵害になるものと考えられます。
裁判例では、フライデー編集部員が高さ約1.75メートルのコンクリート塀越しにダイニングキッチン内の私人の写真撮影を行った事案で、110万円の慰謝料及び弁護士費用の支払を命じています(東京高裁平成2年7月24日判決、東京地裁平成元年6月23日判決)。
4 その他
その他、構図のメインに人が写り込んでしまった場合、子供が写り込んでしまった場合には、クレームになることが多いと言われているので、より慎重に考え、写り込んでしまった人や保護者に許可をもらうことをおすすめします。
2 動物・建築物・施設内の写真撮影について
1 動物の写真撮影
結論として、「動物の写真撮影」については、ほんんど法的な問題は生じないと考えられます。
なぜならば、「動物」は法的には、「物」(動産)という扱いになるため、人格的利益である肖像権の侵害等の問題は生じないからです。
そこで問題となるのは、写真撮影行為が所有権の侵害になるかどうかということですが、写真撮影は、有体物を排他的に支配する権能を侵害したということはできず、所有権の侵害になり得ないことは既に裁判例で判断されています(東京地判平成14年7月3日)。
2 建築物の写真撮影
「建築物の写真撮影」についても、特に法的な問題は生じないと考えられます。
まず、一般住宅等の一般建築物には著作権は生じないですが、創造的・美術的な建築物には著作権が発生します。
しかしながら、著作権の侵害となるのは、建築物を建築により複製するような場合に限られることが著作権法上規定されており、写真撮影によって建築物の著作権を侵害することはありません。
3 施設内の写真撮影
上記のほか、「施設内の撮影」については、施設の管理権を前提として、撮影を禁止するルールが設定されていないか、ルールに違反するような撮影を行わないかについて留意する必要があります。
記念撮影等の個人利用目的の場合には、多くの場合で許容されていると考えられますが、特に商用利用の場合、施設の許可が必要とされていたり、撮影が禁止されていたりすることが考えられます。
したがって、トラブルを避けるためにも、撮影が可能かどうかは事前に施設に確認することをおすすめします。