明石海峡大橋やE28神戸淡路鳴門自動車道を走行中に事故に遭うと、「ここはどこの警察に連絡すればよいのか」「橋の上やトンネルの中で、どこに停まれば安全なのか」「相手方の保険会社が示してきた過失割合は、本当に正しいのか」といった不安が一度に押し寄せます。高速道路や橋の上の事故は、一般道とは違う事情がいくつも重なるため、事故直後の動き方と、後から証拠をどう残すかが、その後の手続に影響します。
この記事では、淡路島・神戸で交通事故に対応する弁護士の視点から、事故直後にまず優先すべき安全確保と通報、立場によって意味が変わる「管轄」の整理、高速道路・橋上の事故で過失割合が問題になりやすい理由、示談前に確認しておきたい資料を順番に整理します。なお、過失割合や賠償額は事故の具体的な状況によって大きく変わります。本記事は一般的な考え方の整理であり、最終的な結論は個別の資料を確認したうえで判断する必要があります。
提示された過失割合や示談案について、「署名する前に一度確認したい」という段階でも差し支えありません。資料を確認することで、後から争点になりやすい点を整理できます。
Contents
明石海峡大橋・神戸淡路鳴門自動車道の事故でまず確認すべきこと
高速道路・橋上の事故では、けがの治療や賠償の話よりも前に、二次事故を防ぐための安全確保と救護が最優先です。JB本四高速の案内でも、緊急時はまず安全を確保したうえで通報するよう求められています。
安全確保と救護を最優先にする
JB本四高速が案内する高速道路上での基本的な流れは、ハザードランプを点灯して後続車に合図する、速やかに路肩へ停車する、発炎筒を着火させて停止表示器材(三角表示板)を車の後方に置く、ガードレールの外側など安全な場所へ避難する、そのうえで非常電話や道路緊急ダイヤルで通報する、というものです。車外に出る際は、ほかの通行車両にはねられないよう十分に注意する必要があります。けが人がいる場合は、可能な範囲で救護を行います。
どこへ通報するか|110番・非常電話・道路緊急ダイヤル
緊急の通報先としては、警察への110番のほか、本線やトンネル内に設置された非常電話、道路緊急ダイヤル【#9910】があります。非常電話や道路緊急ダイヤルは、本四高速の管制室につながります。通報の際は、JB本四高速の案内に沿って、発生場所(キロポスト、本州へ向かう上り線か、四国へ向かう下り線か)、事故車の数や停止位置、火災の有無、けが人の有無などを伝えると、その後の対応が円滑になります。
警察への届出と交通事故証明書、保険会社への連絡
事故に遭ったときは、必ず警察へ届け出ることが重要です。自動車安全運転センターの案内によれば、交通事故証明書は、警察から提供された資料に基づいて交通事故の事実を確認した書面であり、警察への届出がないと証明書の交付に支障が生じる可能性があります。申請できるのは、事故の当事者(加害者・被害者)または当事者から委任を受けた方です。あわせて、加入している任意保険会社や、相手方の保険会社への連絡、弁護士費用特約の有無の確認も進めておくとよいでしょう。交通事故証明書の交付可能期間や手数料は変更されることがあるため、最新の内容は自動車安全運転センターの公式情報でご確認ください。
「管轄」は一つではない|警察・道路管理者・民事手続を分けて整理する
高速道路・橋上の事故で「管轄はどこか」と考えるとき、実は立場ごとに意味が異なります。警察の担当区間、道路を管理する会社、賠償をめぐる裁判所、保険会社の対応は、それぞれ別の枠組みです。混同すると、「連絡すべき先」や「確認すべき資料」を取り違えてしまいます。下表で整理します。
| 区分 | 主に関係する先 | 確認すること | 取るべき行動 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 事故直後の通報 | 警察(110番)・本四高速管制室(非常電話、道路緊急ダイヤル#9910)・消防 | けがの有無、発生場所(キロポスト、上り線/下り線) | 安全確保・救護のうえで通報する | 通報より先に安全な場所へ避難する |
| 警察の担当区間 | 兵庫県警察 高速道路交通警察隊(垂水分駐隊・洲本分駐隊など) | どの分駐隊が臨場・捜査を担当するか | 人身事故としての届出、実況見分への協力 | 区間ごとの担当は公式情報で要確認 |
| 道路管理者・規制情報 | JB本四高速 | 通行止め・車線規制・強風規制・落下物処理の有無 | 規制情報や通報の記録を残す | リアルタイムの道路状況は断定できない |
| 交通事故証明書 | 自動車安全運転センター | 警察への届出の有無、当事者か委任者か | 早めに申請手続を確認する | 警察未届だと交付に支障が出る可能性 |
| 保険会社の対応 | 自賠責保険・任意保険、弁護士費用特約 | 提示の根拠資料、過失割合の前提 | 安易に同意せず、書面を保存する | 提示された割合は確定ではない |
| 民事訴訟の管轄 | 地方裁判所/簡易裁判所 | 被告の住所地、義務履行地、不法行為地、請求額 | 提訴前に管轄を整理する | 個別事情や移送により変わる(要確認) |
| 民事調停の申立先 | 簡易裁判所など | 相手方の住所地、合意による管轄 | 話し合い解決の選択肢として検討する | 申立先・条文は要確認 |
| 刑事・行政処分 | 警察・検察、公安委員会 | 人身事故か、被害届・供述の状況 | 必要に応じて弁護士に相談する | 民事の賠償とは別の手続 |
このうち裁判所の管轄は、被告の住所地(普通裁判籍)のほか、義務履行地や不法行為があった地などを基準に検討します。請求額によって簡易裁判所と地方裁判所のどちらに当たるかも変わります。もっとも、共同被告がいる場合や移送の可能性など、個別事情で結論は変わります。「明石海峡大橋の上の事故だから必ずこの裁判所」と一律に決まるわけではありません。具体的な管轄は、資料を確認したうえで判断する必要があります。
高速道路・橋上の事故で過失割合が問題になりやすい理由
高速度・車間距離・進路変更が争点になりやすい
高速道路は走行速度が高いため、車間距離の取り方、進路変更や合流のタイミング、追突を避けられたかどうかが問題になりやすい場面です。同じ「追突」でも、前車が急ブレーキをかけた事情があったか、渋滞の末尾だったか、故障で停車していたかによって、考え方は変わります。
橋上・トンネル・IC・JCT付近の特殊性
E28神戸淡路鳴門自動車道は、明石海峡大橋(橋長約3.9キロメートル)や大鳴門橋、舞子トンネルなどを含み、区間によって車線数や制限速度が異なります。JB本四高速の案内では、明石海峡大橋を含む垂水JCT・IC〜淡路IC間は六車線、その他の多くの区間は四車線とされ、区間ごとに制限速度も定められています。橋の上では路肩や退避できる場所が限られ、強風時には二輪車の通行止めや通行規制が行われることもあります。IC・JCT・合流・分岐・料金所周辺・トンネル付近では、事故の起こり方そのものが変わるため、どの区間で起きた事故かが重要になります。なお、強風や悪天候があったとしても、それだけで直ちに責任が否定される(不可抗力になる)と決まるわけではありません。
ドライブレコーダーなどの客観的な記録が重要になる
高速道路・橋上の事故は、目撃者を確保しづらく、現場にとどまって状況を確認することも危険を伴います。そのため、ドライブレコーダーの映像、車両の損傷箇所、現場の位置情報(キロポスト、上り線か下り線か)といった客観的な記録が、過失割合を検討するうえで重要な手がかりになります。
事故類型別に見る主な争点
高速道路・橋上の事故は、類型によって問題になる事情が異なります。代表的な類型と、確認しておきたい資料の方向性を整理します。なお、具体的な過失割合の数値は、裁判実務で参照される基準や個別事情によって変わるため、本記事では数値を示していません。
| 事故類型 | 主に問題になる事情 | 確認したい資料 |
|---|---|---|
| 追突(一般) | 車間距離、前方への注意、急ブレーキの有無 | ドライブレコーダー、車両損傷、ブレーキ痕 |
| 渋滞末尾・低速車への追突 | 前方の視認可能性、停止位置、ハザード表示 | ドライブレコーダー、渋滞・規制情報 |
| 故障車・停車車両への追突 | 停止表示器材や発炎筒の有無、停止位置(本線か路肩か)、夜間・視界 | 停止表示の状況、現場写真、時刻・天候 |
| 車線変更・進路変更 | 合図の有無、相対速度、進入のタイミング | ドライブレコーダー、車両の接触部位 |
| 合流・分岐(IC・JCT付近) | 優先関係、加減速、合図 | ドライブレコーダー、現場の車線構成 |
| 落下物による事故 | 落下物の発見可能性、回避可能性、落とした側の責任 | 現場写真、規制記録、目撃情報 |
| 二次事故 | 一次事故後の停止・避難の状況、後続車の予見可能性 | 時系列の記録、停止表示、通報記録 |
| 二輪車・大型車が関係する事故 | 車種の特性、車間・速度、横風の影響 | ドライブレコーダー、車両特性、気象情報 |
停止表示器材の不備や安全措置の不足があった場合に、それが過失割合へどの程度影響するかは、停止位置や時間帯、視界などの個別事情によって異なります。「追突だから必ず〇対一〇」「高速道路では相手が必ず悪い」といった一律の結論にはなりません。
保険会社から過失割合を提示されたときの確認ポイント
相手方の保険会社から過失割合が提示されても、その数字がそのまま確定するわけではありません。提示の前提となっている事故状況の理解が、実際と食い違っていることもあります。署名や同意の前に、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 提示された過失割合の根拠(どの事故状況図・基準を前提にしているか)
- 事故状況図やドライブレコーダーの内容が、実際の走行と一致しているか
- 車両の損傷箇所と、説明されている事故態様が整合しているか
- 発生場所(上り線/下り線、車線、路肩、IC・JCT付近か)の認識が正しいか
- 速度や停止表示、当時の規制・気象に関する前提が正確か
提示内容に疑問がある場合、その場で同意せず、資料を確認したうえで判断することをおすすめします。提示額を見直す余地があるかどうかは、資料を踏まえて検討する必要があります。
「提示された過失割合に納得できない」「事故態様の説明が実際と違う気がする」という段階でも、資料を確認することで対応方針を整理できます。
示談前・申請前に集めておきたい資料チェックリスト
高速道路・橋上の事故では、現場での確認が難しい分、後から集められる資料が手がかりになります。示談や各種申請の前に、次の資料がそろっているかを確認しておくと、争点の整理がしやすくなります。
事故・現場に関する資料
- 交通事故証明書(警察で人身事故として扱われているかも確認)
- 事故現場の位置情報(キロポスト、上り線/下り線、IC・JCT、車線、路肩の位置)
- ドライブレコーダーの映像
- 車両や損傷箇所の写真、現場写真
- 目撃者の情報
治療・損害に関する資料
- 診断書、診療明細書、通院の履歴
- 車両の修理見積書
- レッカー・ロードサービスの記録
保険・手続に関する資料
- 保険会社から届いた書類、示談案、過失割合の提示資料
- 弁護士費用特約の有無
走行・道路に関する記録
- ETCの利用履歴
- 当時の道路規制情報(通行止め、車線規制)や、強風など気象に関する情報
弁護士に相談を検討したいタイミング
交通事故の相談は、「必ず増額できる」といった結果を約束するものではありません。資料を確認したうえで、対応方針を整理したり、提示された過失割合や示談案を見直す余地があるかを検討したりするための場です。次のような場面では、示談書に署名する前に、一度確認しておくことをおすすめします。
- 保険会社から過失割合を提示され、内容に納得できないとき
- 停車中・追突・車線変更・落下物・二次事故など、事故態様に争いがあるとき
- 橋上・高速道路上で、証拠の確認が難しいと感じるとき
- 治療費や休業損害の打ち切りを告げられたとき
- 後遺障害が残りそうなとき
- 相手方が任意保険に加入していないとき
- 死亡事故・重傷事故や、刑事事件化の可能性があるとき
早めに資料を確認しておくことで、後から争点になりやすい点を整理しやすくなります。個別の事情によって結論は変わるため、まずは手元の資料を確認することから始めるとよいでしょう。
あわじみらい法律会計事務所では、淡路島・神戸を中心に交通事故のご相談に対応しています。提示された過失割合や示談案について、署名前に資料を確認し、対応方針を整理することができます。
よくある質問
明石海峡大橋の上で事故に遭ったら、どこに連絡すればよいですか。
まず安全を確保し、けが人がいれば救護をしたうえで、警察への110番や、本線・トンネル内の非常電話、道路緊急ダイヤル【#9910】で通報します。非常電話と道路緊急ダイヤルは本四高速の管制室につながります。どの警察の分駐隊が担当するかは区間によって異なるため、通報時の案内に従ってください。
神戸淡路鳴門自動車道の事故では、裁判所の管轄はどうなりますか。
賠償をめぐる民事訴訟の管轄は、被告の住所地、義務履行地、不法行為があった地などを基準に検討し、請求額によって簡易裁判所か地方裁判所かも変わります。共同被告の有無や移送の可能性など、個別事情によって結論は変わるため、「橋の上の事故だから必ずこの裁判所」と一律には決まりません。具体的な管轄は資料を確認して判断する必要があります。
高速道路で追突された場合、過失割合は必ず〇対一〇になりますか。
追突であっても、必ず〇対一〇になるとは限りません。前車の急ブレーキの有無、渋滞末尾や故障停車だったか、停止位置や表示の状況などによって考え方は変わります。具体的な割合は、裁判実務で参照される基準や個別事情を踏まえて検討します。
橋の上で強風があった場合、過失割合に影響しますか。
強風や悪天候は事情の一つとして考慮されることがありますが、強風があったというだけで直ちに責任が否定されるわけではありません。当時の規制状況や走行状況とあわせて、個別に判断されます。
ドライブレコーダーがない場合でも、過失割合を争えますか。
ドライブレコーダーがなくても、車両の損傷箇所、現場の位置情報、目撃者の情報、修理見積書などの資料から検討できる場合があります。どの資料が手がかりになるかは事故の状況によります。
交通事故証明書は必ず必要ですか。
交通事故証明書は、事故の事実を確認する重要な書面です。警察への届出がないと交付に支障が生じる可能性があるため、事故に遭ったときは警察へ届け出ておくことが大切です。申請できるのは当事者または委任を受けた方で、交付可能期間や手数料は自動車安全運転センターの公式情報でご確認ください。
物件事故として届け出た後に痛みが出た場合は、どうすればよいですか。
物件事故として処理した後でも、痛みが出た場合は、早めに医療機関を受診し、警察や保険会社への対応について確認することが考えられます。届出の内容によって手続が変わることがあるため、状況に応じて弁護士に相談することも一つの方法です。
保険会社の示談案に署名する前に、相談できますか。
署名する前の段階でもご相談いただけます。提示された過失割合や示談案について、資料を確認することで、見直す余地があるかどうかを検討できます。署名後は内容の変更が難しくなることもあるため、疑問があれば署名前の確認をおすすめします。
まとめ|次に取るべき行動
- 高速道路・橋上の事故では、まず安全確保・救護・通報・警察への届出を最優先にする。
- 「管轄」は、警察の担当区間、道路管理者、裁判所、保険会社の対応で意味が異なる。混同しないよう整理する。
- 過失割合は、速度・車間距離・進路変更・停止位置・停止表示・落下物・天候・規制状況・ドライブレコーダーなどの資料によって変わり、一律には決まらない。
- 示談や申請の前に、交通事故証明書、診断書、ドライブレコーダー映像、保険会社の提示資料などを確認する。
- 提示された過失割合や示談案に疑問があれば、署名前に資料を確認し、対応方針を整理する。
個別の事情によって結論は変わります。示談前・申請前・署名前の段階で、一度手元の資料を確認しておくことをおすすめします。
監修者・執筆者
藤井 貴之(弁護士・公認会計士)
あわじみらい法律会計事務所
所属弁護士会:【要確認】/登録番号:【要確認】
取扱分野:交通事故、相続・遺産分割、企業法務、事業承継ほか
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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な事情によって結論は変わります。
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