むち打ち症について
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むち打ち症
はじめに
交通事故における怪我で圧倒的な割合を占めるのは、むち打ち症です。
もっとも、むち打ち症は、骨折などと異なり、直接的な人体の損傷を画像等で証明できないことがほとんどです。
また、痛みの程度を客観的に数値化する検査方法も現在は存在しません。
したがって、むち打ち症の痛みやしびれなどの症状を直接証明することには困難が伴うこともあり、交通事故で頻繁に生じる怪我であるにもかかわらず、突き詰めるといろいろと難しい問題が生じる可能性のある怪我であるといえます。
そこで、本コラムでは、むち打ち症について、淡路島の弁護士が解説いたします。
むち打ち症とは
1 むち打ち症の診断名・原因・症状
むち打ち症とは、首に大きな衝撃が加わることで痛みや不調が生じる怪我のことをいいます。
むち打ち症は、頚椎捻挫、頚部挫傷、外傷性頚部症候群、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症などの総称として広く用いられています。
むち打ち症は交通事故以外にもスポーツ事故や日常生活における転倒など、さまざまな原因で発生します。
むち打ち症の主な症状としては、首の痛み、動かしづらさ、しびれ、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気などがありますが、軽症のものから頚髄に損傷があるなど重症のものまで程度に応じてさまざまな症状が生じます。
2 むち打ち症の検査・治療方法
むち打ち症の検査には、Ⅹ線、CT、MRIなどの画像診断のほか、深部・病的反射検査、スパーリングテスト、ジャクソンテスト、筋電図検査、神経伝導速度検査、知覚検査、徒手筋力検査(MMT)、筋萎縮検査などのさまざまな検査方法が用いられます。
一方で、むち打ち症の治療には、まず、頚椎カラーによる頚椎固定、非ステロイド性消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬、筋緊張弛緩剤などの薬物処方があります。
また、頚椎牽引、温熱療法、電気療法などの物理療法、運動療法療法、神経ブロック注射なども行われることがあります。
こうした治療で2~3か月程度で症状が改善することが多いですが、中には半年以上から数年間の治療を行った場合でも症状が軽快しないことも少なくありません。
交通事故等が原因でこうした症状が持続することになってしまった場合には、むちうちの後遺障害等級認定の手続を行うことになります。
むち打ち症の後遺障害等級認定
1 むち打ち症で認定される後遺障害等級
実務上、むちうちの後遺障害等級認定の結果は、12級、14級あるいは等級非該当のいずれかになります。
12級は残存した障害が「局部に頑固な神経症状を残すもの」と認定された場合です。
12級が認定されるには、残存した障害の存在が「医学的に証明可能なもの」であることが必要です。
「医学的に証明可能」とは、症状の原因が何であるかが証明できる場合であり、被害者の訴えている痛み、しびれ、運動機能の低下などが被害者の誇張ないしは作用ではないと認められる場合であっても、医学的な見地から症状の原因が特定されなければならないことに注意する必要があります。
14級は残存した障害が「局部に神経症状を残すもの」と認定された場合です。
14級が認定されるには、残存した障害の存在が「医学的に説明可能なもの」であることが必要です。
「医学的に説明可能」とは、残存する症状が事故により身体に生じた異常によって発生していると説明可能なものをいい、被害者に存在する異常所見と残存している症状との整合性が認められる場合をいいます。
したがって、被害者の訴え(自覚症状)のみでは被害者の身体の異常との整合性がないとして、等級非該当とされることになります。
2 むち打ち症の後遺障害認定基準
医学的に証明・説明できるかは、まずは、Ⅹ線、CT、MRI等の画像診断結果、深部・病的反射検査、スパーリングテスト、ジャクソンテスト、筋電図検査、神経伝導速度検査、知覚検査、徒手筋力検査(MMT)、筋萎縮検査等の種々の検査結果が最も重要になります。
また、画像診断結果、検査結果以外には以下のような事項が考慮要素とされます。
・事故態様(車両の損傷状況等から、事故は軽微・重大のいずれと認定されるものであるか)
・通院実績(どのような医療機関にどの程度通院しているかどうか、神経ブロック注射等の治療を受けているかどうか、症状固定後も通院しているかどうか)
・症状の一貫性・連続性(症状固定時に残存した症状は事故直後からの連続性、一貫性があるかどうか)
・症状の常時性・重篤性(症状固定時に残存した症状は常時あるもので相応に重篤なものであるかどうか)
・既往症の有無・程度(事故前から症状・通院歴がないかどうか)
・被害者の年齢(20歳未満の若年者かどうか)
3 むち打ち症の後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益
1 12級の場合
12級の後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料は、290万円です。
12級の後遺障害が認定された場合の後遺障害逸失利益は、一般的に以下のとおり計算します。
・ 事故前年の年収(基礎収入) × 14%(労働能力喪失率) × 8.5302(10年間のライプニッツ係数)
したがって、事故前年の年収が500万円であった被害者の方に対する後遺障害逸失利益は、597万1140円(=500万円×14%×8.5302)です。
よって、後遺障害慰謝料の290万円と合わせて、後遺障害に基づく損害金額は、887万1140円になります。
2 14級の場合
14級の後遺障害が認定された場合の後遺障害慰謝料は、110万円です。
14級の後遺障害が認定された場合の後遺障害逸失利益は、一般的に以下のとおり計算します。
・ 事故前年の年収(基礎収入) × 5%(労働能力喪失率) × 4.5797(5年間のライプニッツ係数)
したがって、事故前年の年収が500万円であった被害者の方に対する後遺障害逸失利益は、114万4925円(=500万円×5%×4.5797)です。
よって、後遺障害慰謝料の110万円と合わせて、後遺障害に基づく損害金額は、224万4925円になります。
交通事故の弁護士費用
●弁護士費用特約が付いている場合
法律相談料、着手金だけでなく、多くの場合、報酬金や実費等の費用も自己負担額0円で当事務所にご依頼いただけます。
※法律相談料が10万円を超える場合には、自己負担が生じます。
※弁護士費用特約が利用可能な場合、弁護士費用特約の支払基準に従って、弁護士費用(相談料、着手金、報酬金等)をご請求させていただきます。
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●弁護士費用特約が付いていない場合
初回法律相談料:0円
着手金:0円
※訴訟、2回目以降の異議申立、事故の相手方が無保険の場合等には、追加着手金をいただくことがあります。
報酬金:16.5万円+賠償金の11%~(消費税込)