離婚するまでに準備しておくべきことについて
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離婚するまでに準備しておくべきこと
はじめに
離婚を円滑に進めるためには、離婚準備を万全にしておくことが重要です。
離婚の種類・(法定)離婚原因、離婚するときに決めなければならないこと(離婚の条件)を把握するほか、離婚するまでに準備しておくことを理解しておきましょう。
本コラムでは、離婚するまでに準備しておくべきことについて、淡路島の弁護士が解説いたします。
なお、離婚の種類・(法定)離婚原因については、こちらを、離婚するときに決めなければならないこと(離婚の条件)については、こちらをご参照ください。
1 離婚の理由を明確にしておくこと
1 離婚原因を明確化しておく必要性について
裁判離婚をするためには、(法定)離婚原因があることが必要になります。
協議離婚や調停離婚では、必ずしも法定離婚原因がなくても相手方の同意が得られるのであれば離婚することは可能ですが、あいまい・身勝手な理由などでは、相手や調停委員会の理解を得られず、離婚できない・離婚できたとしても不利な条件になってしまうことがあります。
したがって、離婚準備としてはなぜ離婚する必要があるのか、相手・調停員会を説得できるだけの明確な理由を準備しておく必要があります。
なお、(法定)離婚原因とは、⑴不貞(不倫)行為、⑵悪意の遺棄、⑶3年以上の生死不明、⑷回復の見込みのない強度の精神病、⑸その他婚姻を継続し難い重大な事由です。
(法定)離婚原因については、こちらをご参照ください。
2 離婚原因を立証するための証拠の収集
(法定)離婚原因を主張するためには、主張する事実を裏付ける証拠があることが必須となります。
証拠がなければ事実であっても、裁判では認められません。
一度、別居や離婚を切り出すと、相手が証拠隠滅行為を行うなどし、(法定)離婚原因を立証するための証拠を収集することが難しくなり、法定離婚原因の主張が困難になることが考えられます。
したがって、別居や離婚を切り出す前に、(法定)離婚原因の証拠は収集しておきましょう。
離婚原因の証拠になるものは、写真や録画、録音データ、念書、レシート・領収証、メール・SNSのメッセージ、診断書・診療記録などがあり、特に離婚原因についての録音・録画や離婚原因を認める念書の証拠価値は高いです。
3 (法定)離婚原因がない場合
(法定)離婚原因がない場合でも、5年以上の別居期間があれば離婚が認められやすくなります。
したがって、明確な離婚理由がない場合で離婚したい場合には、別居することが考えられます。
なお、夫婦間には同居義務があるため、別居の開始に際しては、別居することを夫婦間で合意し、婚姻費用などについても協議して決定しておくことが理想です。
もっとも、どうしても合意できない場合は一方的に別居することも検討せざるを得ません。
2 離婚後の生活の準備をしておくこと
1 離婚後の生活費
離婚後の生活費はどの程度になるのか、最低限生活に必要な金額はどの程度であるのかについては離婚前から把握しておく必要があります。
専業主婦(主夫)であったり、パートタイム労働者である場合、離婚後の生活に備えた職探しが必要になることもあります。
場合によっては、離婚前から安定した仕事に就けるよう、スキルアップ(資格取得、職業経験など)して準備しておく必要があります。
さらに、離婚後の生活費や収入を把握していなければ、離婚の条件である財産分与、慰謝料、養育費などについても、どのくらい確保する必要があり、どこまで妥協できるのかを明確にすることができません。
未成年の子どもがいる場合は、子どもの生活費・教育費などもどの程度必要になるのかを合わせて把握しておかなければ、子どもの学校生活、進路や将来にまで影響しかねません。
なお、後述のとおり、養育費については、支払を命じる審判などがなされても支払われず、差押えする財産も見つからず、養育費が得られないことも考えられます。
したがって、可能であれば、養育費を過度に当てにすることなく、もし養育費の不払が生じても一応の生計が成り立つような計画を準備するようにしましょう。
2 離婚後の住居
離婚後の住居としては、⑴婚姻中に住んでいた住宅に住み続けること、⑵新しく賃貸住宅を借りること、⑶実家に戻ることが考えられます。
⑴婚姻中に住んでいた住宅に住み続けるためには、相手には退居することについて合意してもらう必要があります。
もっとも、住宅が賃貸であるのか、所有であるのか、住宅ローンは残っているのか(オーバーローンかどうか)、住宅(及び住宅ローン)の名義はどのようになっているのかなどによって、状況は様々に異なりますので、弁護士に相談することをおすすめします。
⑵新しく賃貸住宅を借りる場合、敷金・礼金などの初期費用が掛かるほか、毎月の賃料を負担しなければなりません。
⑶実家に戻る場合、初期費用や月々の賃料は掛からず、生活費を抑えることができます。
もっとも、親に経済的な負担を掛けることになりますし、生活に干渉を受けるおそれがあります。
このように、離婚後の住居は、希望する離婚の条件とも関連してくるため、あらかじめ見通しを立てておく必要があります。
3 お金の準備をしておくこと
1 財産分与のための財産調査
離婚するときには、財産分与、慰謝料、養育費などのお金の問題について条件を合意する必要があります。
なお、離婚するときに決めておかなければならないこと(離婚の条件)については、こちらをご参照ください。
このうち、財産分与は、夫婦の財産の清算のため、夫婦の一方が他方に対して財産を分与するものです。
財産分与は、夫婦の婚姻中に協力して築いた財産である限り、名義にかかわらず全て対象となります。
したがって、、財産分与をしっかり算定するためには、夫婦の共有名義の財産に限らず、夫婦の一方の名義の財産も確認しておく必要があります。
もっとも、一度、離婚を切り出すと、相手名義の財産(通帳など)を確認することが難しくなり、財産の把握が困難になることがあります。
よって、離婚に関するお金の問題を円滑に解決するためには、あらかじめ調査して、夫婦の財産全てを把握しておくことが重要になります。
具体的には、相手の源泉徴収票(給与所得者の場合)・確定申告書(自営業者・法人経営者の場合)のコピー、家族全員の口座の金融機関、口座番号、預貯金残高、満期などの確認・預貯金通帳のコピー、不動産の売買契約書・賃貸借契約書・権利証などのコピー、積立型保険の保険会社、保険の種類、契約者、受取人、保険料、満期、解約返戻金ななどの確認・保険証書のコピー、保有する有価証券の銘柄、口数、購入価額、時価などの確認、借金(住宅ローンを含む)の残高の確認・明細書のコピーなどを行います。
2 調停費用・裁判費用、弁護士費用
協議離婚ではほとんど費用は掛かりませんが、離婚の条件などを書面化した離婚協議書を公正証書で作成する場合、手数料として1万円程度が必要になります。
なお、離婚の条件が決定したら、後々問題になることを避けるため、離婚協議書を公正証書で作成することをおすすめします。
離婚協議書の作成を弁護士に依頼すると弁護士費用が掛かりますが、例えばひな形を用いて一応の案を作成して、法律相談の範囲内で弁護士にチェックしてもらうということで費用を抑えることも考えられます。
調停離婚も自分で手続するのであれば、印紙代・郵券代として数千円程度で手続することが可能です。
この場合、期日ごとに困ったことがあれば弁護士に相談して対応していくという方法で費用を抑えることも考えられます。
もっとも、途中で自分一人での対応が困難になり、結局、途中から依頼するというのであれば、最初から弁護士に依頼することをおすすめします(当事務所では、最初から弁護士に依頼するのと途中から弁護士に依頼するので費用は変わりません。)。
裁判離婚では、裁判を起こすための印紙代・郵便代として数万円程度かかります。
弁護士費用に関しては、当事務所の弁護士費用はこちらになります。
弁護士に依頼するとなると、着手金として、協議離婚では22万円(消費税込)以上、調停離婚では33万円(消費税込)以上、裁判離婚では44万円(消費税込)以上がかかることが多いので、あらかじめ準備しておく必要があります
3 離婚手続中の生活費
離婚手続中の生活費は、婚姻費用として収入の多い方から収入の少ない方または子どもを監護していない者から監護している者に生活費の支払が行われます。
もっとも、財産分与は離婚が成立するまでは行われませんので、婚姻費用だけでは生活費が十分に賄えないことも考えられます。
また、裁判所で婚姻費用の支払を命じる審判がなされても、支払われず、差押えする財産も見つからない場合は婚姻費用が得られないことが考えられます。
したがって、離婚手続中の生活費については、ある程度余裕を持って準備しておくことが重要です。
また、調停には少なくとも6か月から1年程度、裁判には調停期間に加えて1年から2年程度の長い期間を必要としますので、その覚悟をしておく必要もあります。
4 子どものための準備をしておくこと
1 親権
夫婦間に未成年の子どもがいる場合、提出する「離婚届出」には父母(夫婦)のどちらが子どもの親権者になるかを必ず記載しなければならず、親権者の記載のない離婚届出は受理されません。
親権とは、子どもの世話、しつけ、教育をする「身上監護権」と、子どもの財産の管理、法律行為などをする「財産管理権」のことをいいます。
婚姻中の父母は、共同親権者ですが、離婚後の夫婦ではどちらを単独親権者にするかを決定する必要があり、父母間でどちらが親権者になるか決めることができない場合、家庭裁判所の審判で親権者を決定することになります。
家庭裁判所では、従前の監護状況、現在の監護状況、父母の監護能力(健康状態、経済状況、居住・教育環境、監護意欲や子どもへの愛情の程度、監護補助者による援助の可能性等)、子どもの年齢、心身の発育状況、従来の環境への適応状況、環境の変化への適応性、父又は母との親和性、子どもの意思等を考慮し、どちらが親権者になることが「子の利益」に合致するかを基準として判断されることになります。
したがって、親権者となることを希望するならば、上記を踏まえ、身上監護権、財産管理権を適切に行使できる状況を準備しておくことが重要になります。
また、別居などに際して子どもが相手の監護のもとで生活するようになると、監護実績が十分にある親であっても親権を取り戻すことが難しくなることがありますので、子どもを手放さないことも非常に重要です。
2 保育園・幼稚園の転園手続、小中学校の転校手続、学童保育の利用などの準備
子どもを連れて引っ越しする場合、保育園・幼稚園の転園、小中学校の転校を考える必要があります。
具体的な手続については、あらかじめ自治体や学校に確認しておくことをおすすめします。
仕事を持ちながら子育てするために、新たに認可型保育園に入園したり、学童保育を利用するなどすることが考えられる場合、あらかじめ入園・利用の可否や具体的な手続を確認しておくことも重要です。
3 養育費
離婚にあたっては、養育費についていつまで、どのような方法で、毎月いくら支払うかなどを具体的に取り決めておく必要があります。
養育費の金額は、家庭裁判所は、「養育費・婚姻費用算定表」(令和元年12月改訂)を公表しており、実務上、夫婦双方の収入をベースとして決定します。
したがって、離婚した場合、養育費がどの程度の金額になるのか、子どもの生活費・教育費などはどの程度必要になるのかも併せて算出しておくべきです。
学資保険などのウェブページにおいては、子どもの教育費として必要な金額の目安などが掲載されており、参考になります。
・ 住友生命
・ 富国生命
なお、養育費の不払に対しては、強制執行認諾文言付公正証書や家庭裁判所の調停で養育費の支払の取り決めを行うことで、不払となった養育費の支払を強制的に確保する手段もありますが、婚姻費用と同じく、養育費の支払を命じる審判がなされても、支払われず、差押えする財産も見つからない場合は養育費用が得られないことが考えられます。
4 児童扶養手当の認定・給付、ひとり親支援制度など
児童扶養手当の認定・給付のほか、ひとり親支援制度などについても各自治体の福祉窓口などで確認し、生活の見通しを立てましょう。
例えば、公営住宅への入居募集にしあして、母子(父子)家庭は当選率が一般世帯よりも優遇されていることが通例であり、母子世帯対象の母子アパートがある自治体もあります。
母子家庭への経済的支援(母子寡婦福祉資金貸付など)、生活全般支援(医療、就労など)については、各自治体の母子福祉センターや母子自立支援員が相談に応じています。
児童虐待や子どもの発達・養育への相談については、各自治体の家庭児童相談室、家庭児童相談員が相談に応じています。
5 子どもにとって望ましい話し合いの方法
子どもにとって望ましい話し合いの方法に関しては、裁判所HPにおいて、動画・資料がありますので、こちらもご参照ください。
・動画「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」
・動画「離婚をめぐる争いから子どもを守るために」
・資料「お子さんにとって望ましい 話し合いにするために」
離婚(継続相談、協議書作成、交渉、調停、審判及び訴訟)の弁護士費用
・対応時間30分当たり5500円~1万1000円(消費税込み)を基準として決定。
・11万円~(消費税込)
(着手金)
・調停・審判着手金:33万円~(消費税込)
※交渉から調停・審判に移行した場合、既にいただいております交渉着手金とは別途、追加着手金(22万円~(消費税込))をいただきます。
※調停・審判から訴訟に移行した場合、既にいただいております着手金とは別途、追加着手金(22万円(消費税込))をいただきます。
(報酬金)
・財産給付にかかる報酬金:経済的利益の11%(消費税込)を基準として、案件に応じて決定させていただきます。
※財産給付にかかる報酬金が生じるのは、当事者間で争いがある場合に限ります。
※経済的利益とは、委任者が取得する財産の金額(時価)です。
※面会交流にかかる報酬金が生じるのは、当事者間で争いがある場合に限ります。
※親権獲得にかかる報酬金が生じるのは、当事者間で争いがある場合に限ります。