不貞(不倫)慰謝料請求について
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不貞(不倫)慰謝料請求
はじめに
夫婦は互いに貞操を守る義務(貞操義務)を負っているため、夫婦の一方がほかの異性と性的関係を持てば、他方の夫又は妻の権利を侵害する不法行為になります。
不貞(不倫)行為は離婚原因となる、精神的的苦痛の損害を賠償する責任を生じさせます。
本コラムでは、不貞(不倫)慰謝料請求について、淡路島の弁護士が解説いたします。
不貞(不倫)行為とは
不貞(不倫)行為の典型は、性行為・肉体関係を伴う行為です。
一方で、性行為・肉体関係を伴わない男女の交際が、不貞(不倫)行為をにあたるかどうかについては、未だ最高裁判所の判断は示されていません。
裁判例では、1年以上交際しており、抱き合ったり、キスをしたり、服の上から体を触ったりしていた事案では、配偶者のある異性との交際として社会通念上許容される限度を逸脱していたとして、50万円の不貞(不倫)慰謝料を認めました(東京地判平成28年9月16日)が、キスや抱きしめる行為等があった事案(東京地判平成28年9月13日)、抱き合うようにキスをしたり、別の場所で手をつないで歩きキスをした事案(東京地判平成28年12月28日)では、不貞(不倫)慰謝料の請求を棄却(否定)しました。
性行為・肉体関係を伴わない男女の交際に対し、不貞(不倫)慰謝料が生じるかどうかは、担当する弁護士の主張・立証や、裁判官の判断によって結論が変わり得ます。
不貞(不倫)行為の相手方に対する慰謝料の請求
不貞(不倫)行為が行われた場合、不貞(不倫)行為の相手方にも、故意又は過失がある限り、精神的苦痛の損害を賠償する責任が生じます。
不貞(不倫)行為の相手方に対する慰謝料請求は、損害賠償請求の一種ですから、通常の民事訴訟により請求可能ですし、離婚訴訟と併合して家庭裁判所における訴訟で請求することも可能です。
一方で、故意又は過失の対象は、既婚者であり、夫婦関係が破綻していないことですが、次のような場合、不貞(不倫)慰謝料の請求が認められない可能性もあります。
したがって、不貞(不倫)行為の相手方からは、不貞(不倫)行為の否認(否定)とともに、次のような反論がなされることがあります。
1 ➀既婚者であることを知らず、そのことに過失もない場合
➀既婚者であることを知らず、そのことに過失もない場合、不貞(不倫)慰謝料の請求は認められません。
裁判例においては、具体的事情のもとで、交際相手が既婚者であることについて疑義を生じさせるべき事情があるかどうかということが審理の対象となっています。
例えば、独身であることと告げられていたことや、離婚しているという説明を受けていたことを理由として、不貞(不倫)慰謝料の請求を認めなかった裁判例があります。
一方で、幼い子がいることを知っていた場合に、その子の世話をしている者について関心を抱いてしかるべきだったとして、不倫慰謝料の請求を認めた裁判例があります。
したがって、既婚者が独身であると偽っていた場合、既婚者の年齢が若い場合等で既婚者であることについての疑義を生じさせるべき事情が認められない場合などでは、既婚者であることを知らず、そのことに過失もないと認められる可能性があります。
2 ②婚姻関係がすでに破綻している場合
不貞(不倫)行為が行われた当時、②婚姻関係がすでに破綻している場合、不貞(不倫)慰謝料の請求は認められません。
「婚姻関係の破綻」とは、離婚したのと等しい状態(離婚届を提出していないだけで事実上の離婚状態)であると考えられており、そのような状態に至っている夫婦はそれほど多くはないと考えられ、裁判例においても容易には婚姻関係がすでに破綻していると認めない傾向にあることにはご注意ください。
婚姻関係が破綻していないと判断した裁判例において指摘された事情としては、夫婦が同居し妻が夫の衣服を洗濯していたこと、食事を用意するなどしていたこと、家族旅行に出かけるなどしていたこと、同居しており家族で出かけるなどしていたこと、夫婦として結婚披露宴に出席していたこと、生計を一にしていたこと、離婚に関する具体的な協議が行われることはなかったこと、生活費を手渡していたこと、離婚調停等の手続は行われていなかったこと、別居後に送付された離婚届出を提出しなかったこと、別居を開始してからも挨拶代わりのメールを交わしたり、具合が悪い時に病院への付き添いを依頼していたこと、定期的にメールのやりとりが続いていたこと、食事会に夫婦そろって参加したりしていたことなどがあります。
3 ③婚姻関係がすでに破綻していと信じ、そのことに過失もない場合
③婚姻関係がすでに破綻していると信じ、そのことに過失もない場合、不貞(不倫)慰謝料の請求は認められません。
しかしながら、容易には「婚姻関係の破綻」が認められない以上、③婚姻関係がすでに破綻していると信じ、そのことに過失もないと認められることも極めて稀(まれ)です。
したがって、不貞(不倫)行為の相手方が、さしたる根拠もなく夫婦関係が破綻していると信じた場合、不貞(不倫)慰謝料を支払う責任は免除されることはないと考えられます。
不貞(不倫)慰謝料の相場、増額・減額事由
不貞(不倫)慰謝料の相場は、概ね100万円から300万円までとされています。
裁判例における不貞(不倫)慰謝料の増額事由・減額事由には、次のようなものがあります。
1 不貞行為の頻度
不貞行為の頻度が多いことは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、不貞行為が単発であったり、回数が極めて少ないことは、不貞(不倫)慰謝料の減額事由になります。
2 不貞行為の期間の長さ
不貞行為の期間が長いことは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、不貞行為の期間が短いことは、不貞(不倫)慰謝料の減額事由になります。
3 婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いことは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、婚姻期間が短いことは、不貞(不倫)慰謝料の減額事由になります。
4 未成熟の子どもの有無
未成熟の子ども(概ね20歳未満の子ども)がいることは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、未成熟の子ども(概ね20歳未満の子ども)がいないことは、不貞(不倫)慰謝料の減額事由になります。
5 不貞(不倫)行為時の婚姻関係の状況
不貞(不倫)行為時の婚姻関係が円満であったことは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、不貞(不倫)行為時の婚姻関係にすでに問題があったことは、不貞(不倫)慰謝料の減額事由になります。
6 不貞(不倫)行為の影響
不貞(不倫)行為の結果、配偶者の心身の不調又は婚姻関係の悪化・破綻が生じたこと、離婚に至ったことは、不貞(不倫)慰謝料の増額事由になります。
これに対して、不貞(不倫)行為が発覚しても、離婚や別居に至らなかったことは、家庭の平和を侵害したという限りで慰謝料の金額を発生されることを意味し、離婚に関する慰謝料等までは生じないということになります。
7 不貞(不倫)関係が終了したかどうかなど
不貞(不倫)関係が既に終了したかどうか、継続しているかどうかも不貞(不倫)慰謝料の金額を決定するにあたり考慮すべき事由になります。
以上のほか、不貞(不倫)関係を開始したのがどちらの働き掛けによるものか、謝罪しているかどうかなどによっても裁判上認められる不貞(不倫)慰謝料の金額は影響を受けるものと考えられます。
不貞(不倫)行為の立証方法
不貞(不倫)行為の立証方法としては、性交渉・裸やそれに近い状況の写真・映像、旅行で同じ部屋に宿泊していたことを示す写真・映像など、(ラブ)ホテル・自宅への出入り、キスや抱き合っている場面の写真・映像、配偶者と不倫相手の会話の録音、不貞(不倫)行為を認める念書・映像・録音、性交渉に及んだことがわかるメール・SNSでのやりとり、(ラブ)ホテルのレシート・クレジットカードの履歴、不倫相手との頻繁な通話履歴、興信所による素行調査報告書などがあります。
不倫慰謝料の請求(請求を受けた場合を含む。)の弁護士費用
(着手金)
・訴訟着手金:33万円~(消費税込)
(報酬金)
※経済的利益とは、委任者が取得する賠償金の額(請求する側)又は請求額から減額した額(請求される側)です。