西宮商工会議所会報 『Report(れぽると)』2025年8月号「フリーランス保護審法への対応」・「カスタマーハラスメントに対する法的対応・社内体制の整備」(西宮商工会議所)
企業法務
フリーランス保護新法への対応
質問:近年、当社では、フリーランスに業務を委託することが増加しています。2024年11月1日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(「フリーランス保護新法」)が施行されましたが、発注者として業務を委託するに際して、新たに注意すべきポイントはどのようなものでしょうか。
回答:「フリーランス保護新法」は、働き方の変化に対応し、個人で業務を請け負うフリーランスとの公正な取引を確保するための法律です。
本法の施行によって、企業には、①業務内容・報酬額・支払期日等の取引条件の書面等による明示義務や、②フリーランスから成果物を受領した日(又は役務提供完了日)から原則60日以内の報酬支払義務が課されました。
また、1か月超の継続的業務委託では、③報酬の不当な減額、契約内容の一方的変更・解除、不当要求等が禁止され、6か月超の継続的業務委託の中途解除等では、④原則30日前までの予告義務及び請求に応じた理由開示義務が課されます。
加えて、⑤募集情報の的確表示や育児介護等への配慮、ハラスメント対策に係る対応整備等も求められます。
これらは下請法の適用がない取引にも及び、違反した場合には、助言・勧告、企業名の公表、命令等の行政措置の可能性があるため、企業には取引条件を明記した契約書・発注書の整備や社内運用ルールの見直し等の対応を早期に行うことが求められます。
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カスタマーハラスメントに対する法的対応・社内体制の整備
質問:
近年、当社では、顧客や取引先等からの理不尽なクレーム、暴言、威圧的な言動等、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻化してきています。従業員の安全性と業務の安定性を確保するために、企業にはどのような法的対応や社内体制の整備が求められるでしょうか。
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回答:
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先等による社会的相当性を逸脱した行為を指し、侮辱的な暴言、土下座の強要、不当な謝罪・金銭の要求、長時間拘束等が挙げられます。
こうした行為は、従業員の心身や職場環境に深刻な悪影響を及ぼすため、労働契約法上の安全配慮義務を負う企業には防止体制の整備が求められます(なお、カスハラ対策を雇用管理上の措置義務とする法案は現在国会で審議中です。)。
企業は、厚労省のマニュアルや先進企業の取組例を参考に、録音・録画・記録保存等の証拠確保のほか、複数名での対応、応対時間の制限、専用窓口の設置等初動体制を強化すべきです。
また、規程・マニュアルの整備、研修の実施、産業医・カウンセラーとの連携、EAP導入等により、従業員の心理的安全性の確保も重要です。悪質な事案では、警告書送付、警察通報(威力業務妨害罪・脅迫罪等)、損害賠償請求等の法的措置も必要です。
さらに、対応方針や禁止行為基準の社内外へ明示することは、予防的な抑止策となります。
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